土佐神社(高知県高知市)

     ★☆ 土佐神社高知県高知市) ☆★  
 
土佐国一宮として土佐郡土佐神社(とさ)がある。
古くは土佐高賀茂大社、高賀茂明神(たかかも)さらに別称として「しなねさま(志奈禰様)」とも呼ばれているが、延喜式では都佐坐神社と書く。
所在は高知市街地の北東外れの一宮に位置し、古くはすぐ近くまで海が迫っていたようだ。

 

 
 
 
はじめは祭神を「土佐大神」とだけしていたが、現在は阿遅鋤高日子根神(あじすきたかひこね)一言主神(ひとことぬし)となっている。
そのわけは社伝によるとこうである。
 
古くは高鴨神と呼ばれて大和の葛城山(かつらぎ)に坐す神であったが、雄略天皇(ゆうりゃく)の御世に天皇の怒りに触れて土佐に流された。
その経路は、土佐国幡多郡(はた)の賀茂社をはじめに吾川郡(あがわ)の鳴無神社(おとなし)を経て、ついには土佐神社へ遷った、と。
ところが高鴨神はどの神をさしているのだろうか、という疑問がわく。
社伝と同じ内容のことは『続日本紀』に記されて一言主神のことだとわかる。
しかし、『古事記』にある雄略天皇から崇められていたという記述と矛盾するではないか。
また、『土佐国風土記』の逸文にも「祭神は一言主尊であるが、一説には阿遅鋤高日子根神とも」と記されていたこともあって、一言主神と同じ賀茂氏の祖神である阿遅鋤高日子根神を併記したという。
 
 
 
 
 
 
毎年8月25日(元々は旧暦七月三日)に行われる「志奈禰祭(しなね)」は、土佐三大祭のひとつで土佐神社の最も大切な祭だという。
その名は、新嘗(にいなめ)が転じたものとか新稲(しいね)の転じたものという説、また風の神の志那都比古神(しなつひこ)に由来するという説がある。
 
 
 
しなね祭の初日は宵宮祭で始まる。
無病息災を祈願しながら神楽などの奉納を行い、魔除けの象徴とされるかがり火を祭礼が終わるまで焚きつづける。
そして翌日には本祭の神幸祭商売繁盛などを願いながら、日中にもかかわらず明かりをともした松明を持って神輿行列が御旅所まで練り歩くそうだ。
 
        「夏は、輪抜けに始まりしなね様で終わる」
 
といわれてきたように茅の輪くぐり(夏越しの大祓)で始まった土佐の夏も、しなね祭が終わりを告げると豊穣の秋を迎える。